「財務デューデリジェンス」の青山トラスト会計社
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財務デューデリジェンス実施者に求められる能力

 現状、公認会計士や税理士といった会計・税務の専門家によって行われる財務DDですが、有効な実施には、財務・会計・税務の知識だけでは十分ではありません。
 財務DDを有効に行うためには、財務・会計・税務の知識を持っているだけでは十分ではなく、さらに幅広い知識と経験が求められます。

 

(1) 財務・会計・税務に関する知識

財務・会計・税務に関する知識は、財務DDを行う上で最も基礎的な知識です。財務・会計・税務は企業活動の根底をなし、企業の実態を把握する上でも基礎となるものです。財務DDにおいては、これらの知識を駆使して、M&Aの意思決定に有用な情報を提供するために、企業の決算書や総勘定元帳などの財務を中心とした情報を調査・分析・確認し、依頼者に対してわかりやすく報告します。
ただし、会計と税務は異なるものです。これらは似ているようで、まったく異なった目的から形成されています。会計は投資家および債権者の保護を目的にした制度であり、税務はあくまでも徴税を目的にした制度です。財務DDでは投資家の意思決定に有用な財務情報の提供が目的となりますので、税務ではなく、財務・会計的な視点が重要となります。

 

(2) 監査に関する知識と経験

財務DDに必要な基礎的な能力として、次に監査に関する知識と経験を挙げることができます。財務DDでは、対象企業の財務の実態を把握し、リスクを洗い出すため、決算書等の財務情報が正しいかどうかを確認することが必要となります。しかしながら、財務 DDは、会社や事業の全体を調査対象としているため、その範囲は膨大であり、すべての取引を一件一件詳細に調査することは現実的に不可能です。
しかも、財務諸表監査以上に迅速性が要求されるため、質的、金額的重要性を考えて効率的に調査を行わなければなりません。どのような手続きを行えばどのようなことが立証でき、その証拠力はどの程度であって、どの程度まで調査をすれば一定の心証が得られるのかといったこと(リスクアプローチ)を理論的に理解していなければなりません。こうしたことが適切に判断できるようになるためには、監査に関する知識と経験が必要となります。

それゆえ、財務DDを適切に行うためには、いわゆる「監査論」に関する知識と財務諸表監査の豊富な実務経験が必要となります。

 

(3) M&Aに関する知識

財務DDは、M&Aプロセスの一部であるため、当然にM&A自体に関する知識が必要になります。M&Aに関する知識とは、株式譲渡、合併、株式交換、会社分割、営業譲渡、株式移転等のM&Aの手法に関する法務・会計・税務等の知識はもちろんのこと、M&Aプロセスそのものがどのような流れで行われており、各段階でどのような事象が生じるかを具体的に理解していることです。
例えば、企業概要書(※注1)の一般的内容についての知識、やロングリスト、ショートリスト(※注2)等の役割、またはバリュエーションの手法、それらがどういう位置づけでM&Aの実施に関わっているかについて理解することが必要となります。
実際にM&Aに数多く関与することで財務DDがM&Aプロセスの中でどのような役割を担い、そのプロセスの中で発生する事象が財務DDにどのような影響を与えるのかということが理解できるようになります。

それゆえ、多くのM&Aに関与することは非常に重要となります。

(※注1)企業概要書:秘密保持契約締結後に買い手候補企業に提示される譲渡対象企業の概括的な情報をまとめた書面。企業名、事業内容のほか、業績、財務内容、従業員の情報等が記載される。
(※注2)ロングリスト、ショートリスト:ロングリストとは、M&Aを検討している対象企業の買い手候補先をリストアップしたもの。これを一定の条件等で絞り込んだものをショートリストという。
(出典:日本M&Aセンター)

 

(4) 会社経営・組織・運営と内部統制に関する知識

会社は、ヒト・モノ・カネ・情報が有機的に結合し、組織化されて成り立っています。それゆえ、会社はきわめて複雑であり、取引量や利害関係者も膨大です。
一方で、財務DDにおいては、会社全体のリスク情報をきわめて短期間で効率よく把握しなければなりません。

そのためには、そもそも会社がどのような仕組みで成り立っており、どういう体制で経営が行われているかについての基本的な知識が必要となります。特に、会社の目的は利益追求にあることから、会社には必ず利益の源泉があります。その利益の源泉がどこにあり、同業他社と比べてどういったところが強みとなっているのか、あるいはリスクを抱えている点はどこなのか等について、適切に把握する力がついてくると財務DDのポイントがみえてきます。

また、会社の規模が大きくなり、複雑化してくると、通常、会社を効率よく運営し、統治するために内部統制が構築されます。内部統制は、会社を効率的に経営するための管理の仕組みです。それゆえ、内部統制の整備と運用のあるべき姿を理解し、そのうえで対象企業の状況を認識することで、会社のリスクを効率よく把握することができるようになるのです。

 

(5) 業界に関する知識

M&Aはさまざまな業種・業界で行われています。所属する業界によって、企業の利益の源泉やビジネスの仕組み、組織体制、取引慣行等が異なってきます。
たとえば、製造業は長期的視点に立ってビジネスを行っている会社が多く、利益の源泉や統治体制が比較的しっかりしています。これに対して、流通業や小売業は、流行り廃りがあるため、柔軟な組織体制を構築し、スピード感のある経営を行わなければなりません。

これらの業界ごとの特徴や仕組みなどを理解して財務DDを行えば、対象企業のリスクについて、ある程度予測することができますし、有用な情報を収集するためのポイントも判別できることになります。

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