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財務デューデリジェンスと財務諸表監査/税務調査の違い

財務DDは、財務諸表監査や税務調査などとよく混同されることがありますが、これらはその目的や調査対象、実施する手続等も根本的に異なるものです。
しかし、ともに対象企業に対して財務に関する調査(資産の実在性や評価の妥当性、負債の網羅性、期間帰属の適正性などの検証)をするため、基本的にほとんど変わらないと思っている人は多いようです。実際に、買手のM&A担当者やM&Aアドバイザーのなかにも、同じ公認会計士や税理士が行い、財務諸表を調査対象としており、手続き的にも経営者や経理担当者に対するインタビューや帳簿の閲覧等を行っているため、基本的に大きな違いはないと思っている人が非常に多く見受けられます。

しかしながら、財務DDと財務諸表監査及び税務調査はまったく別物であり、以下のような違いが存在しています。

 

 

・財務DDと財務諸表監査の違い

財務DDと財務諸表監査はまったく異なるものです。財務DDはM&Aの意思決定に関する有用な情報を提供することが目的であるのに対して、財務諸表監査は会計監査人として財務諸表監査の適正性に関する意見表明をすることが目的です。それゆえ、財務DDを財務諸表監査と同様のかたちで行ったとしても、本来の財務デューデリジェンスの目的を果たすことはできません。

また、財務DDは、迅速性をも持って実施することが要求され、かつ、さまざまな制限の下で行われるため、その信頼性は財務諸表監査と比べて相対的に低くならざるをえません。そのような状況において、会計監査人が監査対象会社から依頼を受けて財務DDを実施することは大きな問題をはらんでいます。
対象会社(買手=依頼者)としては、会計監査人が「お墨付き」を与えたのだから、その(修正後の)決算書は当然に正しいものと受け取ります。仮にM&A実施後、子会社となった対象企業に重要な不正や誤謬が発見された場合には、財務DDの依頼者は会計監査人に不信感をもつでしょうし、会計監査人としても監査業務において対して批判的な目をもって対象企業に厳しい態度で臨みにくくなってしまいます。

もちろん財務デューデリジェンスと財務諸表監査はまったく違いますから、本来そのような問題は生じないはずですが、現状においては、そこまで理解されていないことがほとんどであり、後々トラブルとなるケースも少なからずあるのが現実のようです。

 

・財務DDと税務調査(巡回監査)の違い

財務DDと税務調査も、まったく異なるものです。税務調査の目的は、税務申告に基づく納税の適正化です。したがって、決算書が間違っていた(財政状態および経営成績の実態を示していない)としても、税務の申告(別表による加減算に基づく税額の計算)が正しければ基本的に問題とはなりません。税務調査官は、自らの調査で発見した事項を対象企業に説明し、修正申告をするよう促します(修正申告の逍遥)。これを行わない場合には、更生および是認を行います。

また、顧問税理士が行う巡回監査も、財務DDとは性質を異にします。
日本では中小企業を中心に顧問税理士制度が広く浸透しており、この制度は日本の徴税制度を支えるとともに経営基盤の脆弱な中小企業の経営をサポートする役割を担っています。通常、顧問税理士は、毎月1回程度定期的に訪問し、会社経営の状況をヒアリングするとともに、帳簿や関連資料のチェックを行うことによって記帳が間違っていないかどうかを確認します。これを「巡回監査」と呼んでいます。
この巡回監査は、同じ「監査」という言葉が使われていますが、公認会計士が行ういわゆる「財務諸表監査(=会計監査)」とは根本的に異なるものです。

財務諸表監査は、貸借対照表、損益計算書等の財務諸表が財務の実態を表しているか否かについて監査し、財務諸表の適正性に関する意見表明を行うために実施されるものです。これらは会計的な思想(会社法や金融商品取引法)に基づいて行われるものです。
これに対して、多くの税理士が行っている巡回監査は、主に適正な納税のために、税務的に問題がないかという観点から実施されているものであり、税務的な思想(税法)に基づいて行われるものです。それゆえ、税務調査同様、決算書が財務の実態を表しているか否かについては二の次となってしまっています。

財務DDは、M&Aの意思決定に有用な情報の提供が目的であるため、決算書が財務の実態を表しているかが最も重要であり、あくまで会計的な思想が基本となります。
また、巡回監査では、定期的に訪問しているために時間をかけて一つ一つの仕訳を確認することができますが、財務DDでは、調査対象が財務DDの実施者にとって何の関係もない初対面の会社であり、そのような会社に対して決算書が財務の実態を表しているかを短期間で効率的に調査しなければならないため、重要性を考慮して手続を実施(リスクアプローチ)しなければなりません。

それゆえ、多くの顧問税理士の行っている現状の巡回監査では、その目的やアプローチの違いから財務DDを有効に行うことはできません。

 

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