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DD NEWS TOPICS

財務DDニュース07'春夏号

 

財務DD関連

・法人税について防衛力強化に係る財源確保のための税制措置

 2026年4月1日以後に開始する事業年度から、いわゆる防衛特別法人税が創設されます。法人税額に対し、税率4%の新たな付加税が課されることとなります。
これにより、将来適用される税率が現行と異なることになるため注意が必要です。
M&Aにおけるバリュエーション等の場面で将来の事業計画が必要な場合、将来の税率について当該付加税を考慮する必要があると考えられます。

■実効税率の変動(東京都の場合)
・外形標準課税対象法人の場 30.62%⇒31.52%
・外形標準課税対象外法人の場合 34.59%⇒35.43%

一時的な資金繰りとしての資金調達が必要になる場合もあると考えられますので、注意が必要です。

 

・新リース会計基準の製造業への影響

 2027年4月1日以後開始する事業年度の期首から新リース基準が適用されます。
新リース基準においては、従来のリース契約だけでなく、基準で定義されている「リース」に該当した場合には、使用権資産やリース負債を計上する必要が出てきます。
中小企業の会計に関する指針を適用している中小企業にとってはあまり意識することはないかもしれませんが、新リース会計基準の適用が強制される上場会社等にとっては、大きな影響が出る可能性のある会計基準となっています。

 今回は、この新リース基準の導入に係る論点で、多くの製造業を営む中小企業にも影響が出る可能性のある論点を一つ紹介します。

 製造業においては、製造に使用する金型に関する実務慣行が存在します。発注企業(大手メーカーを想定)の専用部品を製造するために、専用の金型を部品メーカー(中小企業を想定)が用意し、当該金型の代金を部品メーカーが部品代金に乗せて、発注企業に請求するといったものです。
これについて、これまでは特段リースといった考え方はなく、部品の売買に係る取引が会計上の取引として記帳されていたものと思われます。

 しかし、新リース基準を適用した場合、当該金型について、発注企業が使用を支配していると認められた場合には、部品メーカーから発注企業に対するリースとして会計処理を行わなければならないケースがでてきます。
発注企業側で当該金型に係る使用権をオンバランスした場合、これまでの部品メーカー任せの管理ではなく、発注企業側での管理が強化されるケースも想定されます。中小企業にとってあまり意識していない新リース会計基準の導入が実務慣行に影響する可能性もあるため、今後の実務対応に注目していく必要があると考えられます。

 M&Aにおいても、下請け企業を多く抱えるメーカーを買収する場合など、思わぬところで使用権資産とリース負債の計上が必要になり、財務諸表に大きな影響を与える可能性もありますので注意が必要です。

 

法務・労務・その他DD関連
(記事監修:弁護士法人 三宅法律事務所)

・不適切な譲り受け側に関わる情報共有の仕組みについて(2025年2月)
不適切な譲受側に係る情報共有の仕組みについて/中小企業庁

 中小企業庁は、2025年(令和7年)2月「不適切な譲受側に係る情報共有の仕組みについて」と題する書面(「本書面」)を公表しました。

 本書面は、2024年(令和6年)8月に改訂された同庁の「中小M&Aガイドライン」(「ガイドライン」)において、仲介者・FA に対し、経営者保証の扱いに係る対応や不適切な譲り受け側の排除に向けた調査の実施等の対応を求めるとともに、不適切な譲り受け側の排除の実効性を高めていくため、最終契約の不履行等の不適切な行為を働く者に係る情報を業界内で情報共有する仕組み(以下「情報共有の仕組み」という。)の構築が期待される旨、記載されたことを受けたものです。
 本書面は、ガイドラインにおいて示す情報共有の仕組みについて、一例として考えられる仕組み・運用の骨子、留意事項等について示しています。

【基本的なスキーム】
 参加者とは別の法人を中立・公平な運営主体として設置の上、運営主体と参加者との契約に基づき構築される必要があります。中立性・公平性は厳に求められるべきものであり、運営主体が譲り受け側から手数料をはじめとする一切の経済的利益の供与を受けないことが必要です。

【登録事由の例】
 注目される登録事由の一例として以下の事由が紹介されています。

(1)最終契約において対象会社の債務に対し、譲り渡し側の経営者が提供する保証及び担保(「経営者保証等」)の解除が譲り受け側の義務(努力義務を含む。)として合意された場合において、
 ① 譲り渡し側の経営者保証等が M&A の成立後、保証の解除にあたって合理的に要する一定期間を経過した後も解除されないとき
 ② 譲り受け側が保証の提供先の金融機関等と譲り渡し側の経営者保証等の解除に向けた相談をすみやかに開始しないとき
 ③ 保証の提供先の金融機関等が譲り渡し側の経営者保証等を解除できないと判断した場合又は解除にあたって条件が付けられる場合において、 譲り受け側が借換・一括返済、解除にあたっての条件の充足等の手段により譲り渡し側の経営者保証等の解除を実現しないとき
(2)最終契約において譲渡対価を分割払いにする場合又は退職慰労金をクロージング日以降の後払いとし、支払い要件が期日の到来のみとしている場合において、当該期日を過ぎても支払いがなされないとき

【登録に係る譲り受け側等への対応】
 参加者は、顧客となる譲り受け側との間で締結する契約において、登録事由に該当する場合に運営主体及び他の参加者に対して、情報共有が可能となるよう秘密保持義務からの除外等の適切な対応を行う必要があります。

 本書面に準拠するため、M&A仲介業者等の協会である、一般社団法人 M&A支援機関協会は、不当なM&A取引を防止するため、2024年10月1日より開始した不適切な譲受け事業者の情報共有の仕組みである「特定事業者リスト」の制度を、2025年4月1日に大幅に改訂し適用を開始しています。