「財務デューデリジェンス」の青山トラスト会計社
お問い合わせ | 資料請求 | 電話窓口:03-5772-1809

DD NEWS TOPICS

財務DDニュース06'秋号

 

財務DD関連

・2024/11月以降 約束手形の交付から満期日までの期間の短縮が求められます
約束手形等の交付から満期日までの期間の短縮を事業者団体に要請します/METI/経済産業省

 2024年11月以降、下請法の運用が変更され、サイトが60日を超える約束手形や電子記録債権の交付、一括決済方式による支払は行政指導の対象となります。
 中小企業M&Aの実務において財務DDを実施させていただいている立場として、現状でも90日手形や120日手形を受け取っている対象企業(売手企業)を見ることがよくあります。この下請法の適用により中小企業の資金繰りが少しでも改善し、事業運営に注力していただく環境が整うことを期待しています。
 一方で、90日手形や120日手形を振り出している企業にとっては、一時的な資金繰りとしての資金調達が必要になる場合もあると考えられますので注意が必要です。

 

・新リース会計基準が公表されました!
企業会計基準第34号「リースに関する会計基準」等の公表/企業会計基準委員会

 2024年9月13日、ついに新リース会計基準が公表されました。収益認識基準2018年に公表された収益認識に関する会計基準以来の大きな影響のある会計基準の公表となります。2027年4月1日以降開始事業年度の期首から適用されます。

 新リース会計基準が適用されると、これまでオンバランスが不要であったオペレーティング・リースに関しても、使用権資産とリース負債の計上が必要となります。
 新リース会計基準の内容については4大監査法人のHPや解説書に譲るとして、本トピックスでは、中小企業M&Aに与える影響について考察してみたいと思います。

>>>中小企業M&Aに与える新リース会計基準の影響

① そもそも現行のリース会計基準でさえ厳格に適用しているケースは稀
 中小企業M&Aの実務に携わっていると、中小企業においては税務上必須となっていない会計処理が厳格に適用されているケースは稀であることを実感します。
 リース取引自体はコピー機を始め、製造業における機械の調達等まで広く利用されています。しかし、中小企業の貸借対照表(BS)に「リース資産」なる勘定が計上されていることは非常に稀です。
 新リース会計基準が適用されたとしても「リース資産」以上になじみのない「使用権資産」が中小企業のBSに計上されることはあるのでしょうか?特にオペレーティング・リースの代表格ともいえるオフィスの賃貸借契約に係る使用権が、自社のBSに計上されることに中小企業の経営者は違和感をいだくのではないでしょうか?
 
 新リース会計基準が中小企業にどこまで浸透するかは、今後の実務の動向を注視したいと思います。ただし、上場企業が買手となるM&Aにおいては、買収後に新リース会計基準を適用することは避けられません。
 中小企業M&Aを実施するにあたっては、財務DDの実施時点で新リース会計基準の適用による対象企業のBSへの影響を把握しておくことが必須になると考えられます。

② 仲介会社の仲介手数料の算定におけるレーマン方式への影響
 M&Aの仲介会社への手数料の算定方法の一つにレーマン方式があります。レーマン方式にも様々な基準価額がありますが、基準価額が総資産となっている場合は注意が必要です。
 この場合、対象企業(売手企業)の総資産に応じて手数料が決定されると考えられますが、財務DDを通じて新リース会計基準を適用した結果、多額の使用権資産が認識され、対象企業の修正BSにおける総資産が想定外に膨らむことが考えられます。
 レーマン方式で基準価額が総資産となっている場合には、基準価額の算定において使用権資産を含むのか否か、有利子負債にリース債務は含むのかといったところは事前に確認をしておく必要があると考えられます。

 

法務・労務DD関連
(記事監修:弁護士法人 三宅法律事務所)

・2024年11月1日にフリーランス新法施行
フリーランスとして業務を行う方・フリーランスの方に業務を委託する事業者の方等へ/厚生労働省
 
 2023年4月28日に可決成立した「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」(フリーランス新法)が2024年11月1日に施行されます。
 労務DDでは、個人への業務委託につき、当該個人の労働者性が主な検討事項でしたが、今後は、これに加えて、フリーランス新法の遵守状況も意識しておく必要があります。
 また、①資本金が1,000万円以下で下請代金支払遅延等防止法(下請法)上の「親事業者」に非該当ゆえ同法の適用を受けずに済んでいた会社が、フリーランス新法2条1項の「特定受託事業者」(同居親族以外に従業員を使用しない個人・法人(代表者一名以外に役員なし))に業務委託する場合や、②下請法では「役務提供委託」の定義から除外され同法の適用を受けずに済んでいた建設工事の委託をする場合のように、そもそも下請法対応が求められていなかった中で、フリーランス新法対応が必要になるような場面の同法遵守状況にも留意が必要となります。

 

その他

・2024年8月30日に中小M&Aガイドライン改訂版(第3版)が公表-DDの重要性にも言及

 中小M&Aガイドライン(第3版)では、DDにつき以下の記載が追記されるなどしています。譲り渡し側だけではなく、譲り受け側にとっても重要なプロセスとされている点や、その重要性につき仲介者・FAに依頼者への説明義務を負わせている点が注目されます。

(47~48頁)
譲り受け側はDDにより、客観的資料に基づいた検討を行うことができ、そもそもM&A を実行すべきか検討し、M&A を実行する場合には最終契約に定める内容・条件(譲渡額、表明保証、補償等)の調整を行うことでM&A 成立後のトラブルを防止できる。また、M&A 成立後の成長を実現する上で重要となるPMI に資する有益な情報を取得することもできる。さらに、譲り渡し側はDDの調査が十分になされない場合には、最終契約において譲り渡し側が負う各種義務(表明保証の範囲や補償額・補償期間等)の負担の増加に繋がりうる点に留意が必要である。このため、DDは、譲り渡し側・譲り受け側双方にとって重要なプロセスであり、予算等の制約がある場合であっても、検討対象を絞るなどの工夫をして、実施する調査の内容を検討することが望ましい。

 

(97頁)
仲介者・FA は、依頼者に対し、第1章Ⅱ3(7)「デュー・ディリジェンス(DD)」に記載のとおり、DDは、譲り渡し側・譲り受け側双方にとって重要なプロセスである旨を説明しなければならない。仮に予算の制約がある場合であっても、検討対象を絞るなどの工夫をした形でのDDの実施を推奨することが望ましい。
また、仲介者・FA は、依頼者に対し、第1章Ⅱ3(8)③「表明保証の内容」に記載のとおり、表明保証の内容はDDの結果を踏まえて適切に検討されるべきであり、期間や責任上限が設定されていない場合や適用場面が一義的に明確でない規定が存在する場合、譲り渡し側が過大な表明保証責任を負担することとなり、当事者間で争いが生じるリスクがある旨を説明しなければならない。