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DD NEWS TOPICS

財務DDニュース07'秋冬号

財務DD関連

・のれんの償却・非償却に関する取り扱いの行方

 M&Aの買手にとって、買収後におけるのれんの会計処理は重要な考慮事項の一つです。株式取得による買収を行った場合には、買手が作成する連結財務諸表にのれんが計上され、現行の日本の会計基準においては、20年以内の一定期間で毎期均等償却が行われています。のれんの償却費は損益計算書の販管費に計上され、買収後の買手の営業利益に直接インパクトを与えることになります。
 一方、IFRS(国際会計基準)や米国会計基準においては、のれんは非償却とされており、年1回の減損テストを実施した結果、減損が不要と判断されている限り、のれんに関する費用が自社の損益計算書に計上されることはありません。

 このように財務諸表における営業利益に大きな影響を与えるのれんの償却・非償却に関する議論ですが、2022年までは、IFRSにおいて償却を行うべきか否かの議論がなされていました。結論としては、IFRSではのれんは償却せずに、非償却として年1回の減損テストを行う現行の処理を継続することが適切とされ、償却に関する議論は一定の結論を得たこととなります。
 
 これまで日本においては、のれんは償却することが適切であると国際的にも主張してきました。しかし、IFRSでは非償却を継続するとの結論が出た後、2025年7月に開催された企業会計基準諮問会議において、いくつかの経済団体やスタードアップ企業等から「のれんの非償却の導入及びのれん償却費計上区分の変更」に関するテーマ提案がなされ、今度は日本においてのれんを非償却とすべきかどうかの議論が開始されています。
 2025年11月4日までに6回の公聴会が開催され、学識経験者、財務諸表利用者、財務諸表作成者、監査人等が様々な意見を述べています。IFRSや米国基準とのコンバージョンに関する論点と合わせて、今後も議論が継続されていくテーマと考えられますが、M&Aの担当者やM&A後に会計処理を行う経理担当者にとっては、影響が大きく重要なテーマであると考えられます。今後の議論の状況や新たな会計基準が公表される可能性について、注視していく必要があると考えられます。

(のれん償却派の意見)
・のれんの減損に関するタイミングが不透明で遅くなる傾向がある、減損テストのコスト負担が重い
・償却費の計上区分を変更する又はのれん償却前利益を決算短信等で開示することにより比較情報の提供は可能

(のれん非償却派の意見)
・国際的な会計基準と比較して日本だけが償却を行っていると比較可能性を損なう
・日本においては、のれんの償却負担が重いためM&Aが進まない

 

「金融商品に関する会計基準(案)」等の公表(2025/10/29:ASBJ)

 2025年10月29日に、企業会計基準委員会(ASBJ)から「金融商品に関する会計基準(案)」が公表されました。これは、主にIFRS第9号の取り扱いを日本の会計基準にも取り入れたものとなります。
 内容としては、金融資産の減損について予想信用損失モデルを導入したものであり、金融資産を3つのステージに分けてステージごとに予想信用損失を見積もるものです。予想信用損失の見積にあたっては確率加重平均といった概念が取り入れられており、また、貨幣の時間価値を考慮する必要もでてきます。
 一般事業会社については、営業債権やリース債権について単純化したアプローチが採用可能であるため、影響は限定的とも考えられますが、特に金融機関において原則的な算定方法を適用したときに大きな影響があると考えられます。
 一般事業会社同士が行うM&Aにおいて、この基準の適用による直接的な影響は大きくはないとも考えられますが、企業再生が絡む場面等で融資元の金融機関が関連する場合、当該金融機関における会計処理がM&Aに何らかの影響を及ぼすケースもあるかもしれませんので留意が必要です。

 

法務・労務・その他DD関連
(記事監修:弁護士法人 三宅法律事務所)

・ 中小M&A市場の改革に向けた検討会の議論状況
「中小M&A市場改革プラン」を公表します/中小企業庁

 中小企業庁は2025年4月に「中小M&A市場の改革に向けた検討会」を設置し、5月9日、6月6日、10月7日と3回検討会を開催し、8月5日には中間とりまとめとして中小M&A市場改革プランを公表しています。
 同プランでは、(1)M&Aの譲り渡し側に係る施策、(2)中小M&A市場に係る施策、(3)M&Aの譲り受け側に係る施策の方向性がとりまとめられています。

 10月7日の第3回検討会では、M&Aアドバイザー個人の資格制度や登録・管理制度、経営者保証解除等の実務慣行(株式譲渡契約書サンプル改訂案の買戻し条項等を含む)など、今後の中小企業M&A実務への影響が大きい点についても深い議論がされています。
 ・配布資料(中小企業庁)
 ・議事要旨(中小企業庁)

 

・ 特定事業者リストの利用者拡大とその影響
特定事業者リスト/一般社団法人M&A支援機関協会

 一般社団法人M&A支援機関協会が運用を開始した、不適切な譲り受け側に関する情報共有の仕組みである「特定事業者リスト」の利用者が2025年10月15日時点で合計107社になるなど順調に拡大しています。
 譲り受け側がひとたび特定事業者リストに登録されてしまうと、特定事業者リスト利用者が当該譲り受け側から仲介業務やFA業務を受託する際に慎重な対応をとることが予想され、当該譲り受け側にとっては良質なM&A案件が持ち込まれにくくなるリスクがあります。
 こうしたリスクを踏まえ、株式譲渡実行後、譲り渡し側に表明保証違反と疑われる事象が判明した場合であっても、譲り受け側としては、M&A対価の分割払いや退職慰労金の後払いを止めて譲り渡し側との交渉を有利に進めようなどと考えにくくなることが予想されます。また、経営者保証の解除が61営業日以降にずれ込まないよう、クロージング前から金融機関に事前相談する(譲り渡し側に事前相談してもらう)などの対応も浸透してくるように思われます。

 

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